恫喝と責任転嫁-コロナ対策へ罰則導入

                             2021年2月15日発行 №437

 


                                    栃木を除く10都府県への緊急事態宣言の延長(3月7日迄1か月)を発表する菅義偉首相(2月2日)


《巻頭言》

●新自由主義的構造改革がもたらしたもの

 

 新型コロナ感染症対策関連法改正案が23日、参院で可決、成立した。「感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)」、「特措法(新型インフルエンザ等対策特別措置法)」、「検疫法」がそれだ。

 

 これらの「改正案」の最大の特徴は、都道府県の知事による「入院措置」に従わない陽性者への罰則の導入や、不足するコロナ対応病床の確保に向けて知事が病院に患者受け入れを「勧告」でき、従わなければその病院名を公表することも可能になることだ。

 

 当初、自民党案では、入院拒否者は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」、感染経路調査拒否には「50万円以下の罰金」を科すという規定だった。これにはさすがに「入院拒否で懲役、前科がつくのか!」との反発や批判がまき起こった。そのうえ、田村厚労大臣も立法根拠を示すことができない。そこへ自公の国会議員が緊急事態宣言の発令中に銀座の高級クラブで遊んでいた(「陳情を受けていた」)ことが発覚、非難の声が高まり、政府・与党は刑事罰導入を断念、各々罰金でなく「50万円以下」「30万円以下」の「過料」へと修正を余儀なくされた。

 

 しかし、現実は入院したいコロナ感染患者が入院したくても病床の空きがなく、救急車が受け入れ先を探して何時間も患者を留め置かざるをえない――そういう事例が数多出ている。「入院調整中」や「自宅療養」といった形で事実上、治療放置され死に至る事例も多々出ている。「入院拒否」する患者がどこにいるのか、そういう事例があれば教えてほしいものだ。

 

 「病院名公表」の脅しも然り。政府は民間病院のコロナ陽性患者受け入れ率が低いと決めつけ拒否する病院の名前を公表すると脅している。しかし、多くの中小民間病院は感染症対策の専門家もそろわず、設備もノウハウも貧弱で、仮に受け入れたとしても、感染防止がまともにできず、逆にクラスターを生み出す危険性が増すのだ。問題は、そうした病院にコロナ患者の受け入れを強要するのではなく、公的病院・民間病院を問わず、コロナ患者とその他の患者を受け入れる分業体制を構築して、感染拡大を防止する態勢を確立することだろう。脅しで従わせるような真似をするのは、政治的無能を証明するようなものだ。

 

 仮に、そうした強制力を働かせるとしよう。その「実務」を担うのは誰なのか? 都道府県の知事や保健所の職員たちだ。彼らは、今でも既に処理能力を超える激務に追い回されているのに、さらに「罰則」適用の実務に追われるのだ。そして後にはワクチン接種の指導も控える。現場には混乱惹起以外の何ものでもないだろう。

 

 しかも、その保健所の数は、1992年には全国に852か所あったのが、2020年には469か所。半数近くに激減しているのだ。激増する仕事量と激減する職員数――。これでどうやってコロナ禍に対処するというのか? 

 

 保健所の激減に示されるのは、小泉純一郎や安倍晋三、橋下徹や大阪維新の連中が推進してきた、いわゆる「無駄をそぎ落とす」新自由主義的構造改革路線であり、大阪では「二重行政の無駄」とよばれたものだ。その結果、大阪では保健所は1か所に集約されてしまった。(ちなみに、新型コロナによる死者は東京=1035人に対して大阪=1009人。人口に比すれば、大阪の死者の多さはダントツだろう:2月8日段階)。

 橋下・吉村・松井と3代にわたる維新の市長が進めた「ムダを徹底的に排除した効果的・効率的な行財政運営」がもたらしたのが、この数字であることを肝に銘じておこう。                                               (編集部N)