国会前で連日抗議行動を続けた若者と熟年世代(2015年6〜9月)


No.410 改めて問い直される日本人の歴史認識


《巻頭言》 

 

●「国家の体をなしていない」のはどちら?

 

 10月30日に韓国の大法院(最高裁)が、戦時中、「日本で強制労働させられた」として韓国人の元徴用工4人が新日鉄住金(前身=日本製鉄)に損害賠償を求めていた裁判で、1人あたり約1千万円の支払いを命じる判決を下した。

 

 これに異例の速さで反応したのは安倍首相や河野外相など日本政府や自民党の面々。いわく1965年の「請求権協定に明らかに違反」(河野)、「ありえない判断だ」(安倍)、「国家の体をなしていない」(中曽根元外相)――。

 

 その理由は、65年の国交正常化に際して韓国が日本から受け取った無償3億ドルの「経済協力資金」に「強制動員の被害補償」のための資金が含まれており、「元徴用工の補償は韓国政府が取り組むべき問題だ」――ということのようだ。

 

 盧武鉉政権が2005年にこうした「見解」を表明して韓国政府がその後一定の補償をおこなった(22万6000人を被害者と認定、約6200億ウォン約=620億円)のは確かだが、これでこの問題が「解決済み」となったわけではない。というのは、「日韓請求権協定で個人請求権は消滅した」とする日本の裁判所の判決を「韓国でも効力を持つ」とした韓国の地裁・高裁判決を、同国大法院が2012年に破棄、差し戻したからだ。

 大法院判決は言う。「日本の判決は、植民地時代の強制動員そのものを違法とみなしている韓国の憲法の核心的価値と衝突する」、「(当時の徴用労働は)不法な植民地支配と侵略戦争と結びついた反人道的な不法行為」で、請求権協定で「個人請求権は消滅したとはみなせない」――。今回確定した大法院判決の内容もこの流れだ。

 

 実は、「個人請求権は消滅していない」という判断は、当の日本政府が公式に繰り返し表明していたことでもある。日韓請求権協定第2条で両国間の請求権の問題が「完全かつ最終的に解決」されたとされていることについて、日本政府は「日韓両国が国家としてもっている外交保護権を相互に放棄した」ということであり、「個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない」(柳井俊二・外務省条約局長、1991年8月27日、参院予算委)、「韓国の方々がわが国に対して個人としてそのような請求を提起するということまでは妨げていない」(同局長、92年2月26日、衆院外務委)――としているのだ。

 

 こうした政府答弁を、まさか政府、自民党が忘れてしまったわけではあるまい。百も承知の上で「解決済み」をゴリ押しして「臭いものに蓋」をしたいのだ。

 

 同様の訴訟が相つぎ悪事を働いた日本企業が賠償金の支払いを余儀なくされることへの「恐怖」もあるだろうが、彼らが最も恐れるのは、自らの祖父母世代が関わった日本の朝鮮植民地支配の実態を改めて広く暴露されることにちがいない。

 

 安倍晋三は今も日本の朝鮮植民地支配を認めていない。「徴用工問題」ではなく「旧朝鮮半島出身労働者の問題と申し上げている」(衆院予算委、11月1日)――。

 ところで、この安倍晋三は「日韓パートナーシップ宣言」(98年10月)で当時の小渕恵三首相が「植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実」に「痛切な反省と心からのお詫び」を公式文書で初めて明記したことを知っているのだろうか?

 

 同じ自民党総裁であり日本国首相である両者をみて韓国・朝鮮の人々はどう思うだろうか? 「国家の体をなしていない」?――

                                                (編集部N)