コロナ禍、新自由主義と人類「共存不可」を暴露      

                             2020年05月15日発行 №428


                               新型コロナウイルスの感染拡大ー緊急事態宣言のなか解雇され、途方に暮れる非正規女性労働者(NHK特番「始まった雇用崩壊」から)


<巻頭言

 

●新自由主義・市場原理主義終焉へ―COVID19の感染爆発

 

 『世界5月号』(岩波書店)の「コロナショック・ドクトリン」特集は、昨年12月、中国武漢市で発生が確認され、近隣諸国・欧米を瞬く間に席巻し、世界と日本を震撼させているこのパンデミックをどう評価すべきか、その原因をどのように見てどう対処すべきかを考えるうえで、非常に勉強になる。

とりわけ「疫病の年に」(マイケル・デイヴィス=米社会学者/本号「読書」参照)と「緊急事態とエコロジー闘争――〈戦い〉の向きを変える」(西谷修=東京外大名誉教授、フランス思想専攻)は、このパンデミックは人間がつくりだした社会制度が生み出すものとして捉えるべきだとする点で共通しており、非常に説得力がある。

 

 西谷氏はこの論考の中で、「緊急事態を戦争にたとえるのは、権力の自己強化という意図をつねに隠している」と指摘、これが何の抵抗もなく通ってしまうのは先行する「テロとの戦い」というレジームが既に社会に埋め込まれていて、「これがグローバル世界の戦争のプロトタイプになっているからだ」とのべる。そして「『見えない敵』との戦争枠組みは、『敵』をつねに具体的に見やすい対象へと転化してゆく」、そのことで「社会分断や政治的敵対関係を醸成するという政治的意図に乗せられる」ことに警鐘を鳴らす。だからこのパンデミックとの「戦い」について、まずは「それは戦争ではない」と確認すべきだと提起する。

 

 この戦いが深刻なのは、有効な対策が社会活動の停止と境界封鎖しかないことなのだが、同時にそれは現代世界の「運行の基軸」となっている「グローバル経済秩序」を破壊するという矛盾を抱えていることだと指摘する。

そして、IT化され記号と数値で効率化・バーチャル化された現代の社会・経済システムの運行を支えていたのは、実は「生きた無数の人びとのコンタクトだった」ことを、この疫病が明らかにしたとのべる。グローバルな分業体制で重層的に組織化された現代の社会・生産システムにとって、「感染抑止」(社会防衛)は自らの血流を止めるに等しい。「防衛手段それ自体が社会システムを窒息させる」――それが今回の「パニックの」もっとも深刻な点なのだ。

 

現代の新自由主義的な資本主義の原型をたどるならば、1980年代に一世を風靡したイギリスのサッチャリズムやアメリカのレーガノミクスに行きつくだろう。全産業的「合理化」、「公的部門の民営化」が急進し、IT化、メカトロニクス化が進み、生産や流通の効率化、利潤の極大化が推進された。資本のあくなき運動の大波にのまれて身動きの取れなくなった旧ソ連・東欧圏の自壊(冷戦体制の崩壊)をへて世界経済は文字通りグローバル化し、アメリカ主導の「市場原理主義」が支配する新自由主義は世界経済の「標準」となった。その「世界標準」が存続の危機に直面しているのだ。

 

アメリカを見てみよう。「雇用のいわゆるギグ化(浮動細分化)が進んでいるアメリカでは、緊急事態によってすぐに広範な生活圏の足元が崩れ、膨大な失業が生じ、小企業は倒産して困窮が広がる。……グローバル経済と不可分の新自由主義政策は社会保障を切り捨ててきたからその惨禍はひどいものになるだろう」――西谷氏のこの指摘通りの事態がいま、アメリカで進行中だ。

 

「国家が面倒を見てきた『公共的なもの』を民営化=私事化し、その権限を市場に『開放』して、私企業のCEOよろしく社会のマネージメントの全権を握る」ような新自由主義的社会システムそのものの破産を示す。

 

これはアメリカだけの話ではない。一時代の終焉を示唆するものなのだ。                           (編集部N)