国会前で連日抗議行動を続けた若者と熟年世代(2015年6〜9月)


No.398 自民「敵失大勝」の陰で拡がる安倍への不信


●「目は口ほどに物を言う」

 

 まずは、左の写真(本号巻頭言参照)をご覧いただきたい。この衆院総選挙で「自民大勝」が判明した後、マスメディアの取材に応じた時の安倍晋三首相の表情だ。「圧勝」とも言われた勝利の高揚感は、全くといっていいほど伺えない。そう感じられた方も少なくないのではないか? 

 「目は口ほどに物を言う」という諺がある。同様に「目は心の窓」、という表現もある。安倍首相のこの眼差しは、彼のどういう心境を表しているのだろうか……?

 

 今回の総選挙については、自公与党が衆参両院で改憲発議が可能な圧倒的多数を保持するなか断行されたこと、それ自体がまず驚きだった。安倍晋三にしてみれば、森友・加計疑惑、自衛隊日報隠蔽事件、共謀罪法案強行採決など、政権の私物化と有無を言わせぬ強引な独裁的振る舞いに批判が高まって都議選大敗の憂き目を見た後、支持率低下がとまらないまま「野垂れ死に」するか、「『3分の2』は当面諦めても、『過半数確保』で延命をはかる」かの、一発勝負・起死回生の賭けだった。

 結果は、見てのとおり。投票日当日、「季節外れ」とでも言うべき台風の接近で投票への足が遠のき、最悪の前回に次ぐ低投票率。組織票の強い自公両党に文字通りの「追い風」となった。

 けれども、自民にとって台風の風よりも大きな「後押し」となったのは、公示直前の、最大野党・民進党の事実上の解党、小池新党「希望の党」への「なだれ込み」と、リベラル派「排除」宣言による「希望の党」の失速――という野党勢力の分裂・混乱だった。

 一昨年の「安保法制」=戦争法反対闘争の中から生まれた市民運動と立憲野党の共闘路線を葬りたい前原・小池両代表の思惑は、枝野氏による立憲民主党立ち上げで潰えたけれども、自公与党と対決する立憲野党勢力の受けた打撃もまた甚大なものだった。市民運動と(旧)民進党も含めた「立憲」野党勢力が従来の共闘路線を堅持していたならば、自公与党、とりわけ自民の小選挙区での獲得議席は、現結果よりはるかに少なかったことは確実だった。それは「自公与党で過半数が勝敗ライン」と安倍晋三が公示前に述べていたことからも明らかだ。意図的に「低い勝敗ライン」を敷いた事を差し引いても、それは安倍晋三の本音に近かったのではなかったか?

 だが、「悪運が強い」と言うべきか、結果は自民「大勝」。自公与党で改憲発議可能な310議席を上回る313議席が転がり込んだ。

 にもかかわらず、なぜ「あの表情」なのか? 要因の一つ目は「安倍政権は飽きられている」(小泉進次郎)といった党内からの安倍批判の公然化だ。今回の「自民大勝」が「安倍の勝利」というよりも「敵失による(薄氷の)勝利」だからだ。二つ目は、公明党の敗北(5議席減の29議席)だ。同党が選挙総括で「安倍政権(暴走)への歯止めにならなかった」ことを「敗北の原因」にあげていることがある。その「歯止め」の最大のターゲットが「9条改憲」なのだ。

 「数は保持したが、困難は増した」―ー安倍晋三の眼差しは、そう語っている。

                                    (編集部N)