現地・市民の力で「イージス」白紙撤回に追込む      

                             2020年07月15日発行 №430


                    秋田県庁を訪れ「イージス」配備断念を知事らに伝え謝罪する河野防衛大臣(6月21日)

 


<巻頭言>

 

●安倍政府、「イージス」配備断念

          ――河野大臣の英断か?

 

 615日、河野太郎防衛相が「イージス・アショア」ミサイル防衛システムの計画停止を表明、後日、配備予定先の山口(陸自むつみ演習場)・

秋田(同・新屋演習場)両県を訪問して、知事らに謝罪した。停止の理由は、迎撃ミサイル発射に使う推進装置「ブースター」を「演習場内に落下させる」ことが今の設計では無理なこと、ソフト・ハードとも改修に「12年の歳月、2200憶円の追加費用が必要なことが判明した」ことだ。

 

このミサイルシステムは、安倍晋三政権がトランプ米大統領から「バイ・アメリカン」(米国製品を買え)と迫られて購入を決めたもので、百数十機のF35 ステルス戦闘機導入とともに「爆買い」の象徴とされる。導入費用は2基で4664憶円、ミサイル本体を含めれば総額8000憶円を超える。米軍産複合体(ロッキード・マーチンやボーイングなど)に「いいカモ」にされ続けている安倍政権だが、「住民に被害を与えかねない」ことを配備停止の理由にして、実際に主要装備の導入を白紙撤回するのは異例のことだ。「辺野古」の例を見るまでもなく、「住民の意向」など無視して強行するのが安倍政権の流儀なのに、いったい何がおきたのか?

 

河野防衛相は昨年9月の就任直後から省内で「無駄撲滅」をかかげ、米政府の言い値で兵器を買わされる「対外有償軍事援助」(FMS)の内容見直しを指示している。その一つがこの「イージス」システム導入だった。しかし、いくら「変人」といわれる河野大臣でも、単なる彼の信条だけで進む案件ではない。では、閣議決定(1712月)までしたものを覆すことを安倍晋三があっさり認めた理由は何なのか?

 

考えられるのは、一つは地元反対運動だ。配備候補地が安倍首相と菅官房長官の出身地=山口県/秋田県で、「すんなり通せる」と踏んでいたのが、地元の強力な反対運動に直面しメドが立たなくなったこと(3~8頁参照)。二つ目は、周辺諸国の軍事技術の急速な発展で、「イージス」防衛システムが急速に陳腐化・無力化したこと。実際、米日政府が事実上「仮想敵」とするロシアや中国は既に「イージス」防衛網を突破する「極超音速滑空ミサイル」を開発済み。また北朝鮮も潜水艦発射ミサイルを保有したため、探知が非常に困難だ。さらに実戦となれば迎撃不能な大量のミサイルを撃ち込む「飽和攻撃」が現代戦では常識で、「弾丸で弾丸を落とす」ような「ミサイル防衛」は役にたたないのだ。

 

こうしたことはまともな自衛隊制服組には常識の類だ。「配備断念」を「決断」した河野防衛相は、では「地元の意向」を尊重する立派な政治家なのか? いや「辺野古」推進も隠さない「二枚舌」ともいえる。ただ、彼のほうが安倍晋三よりも「コスパ」を考慮する「リアリスト」なのかもしれない。そして、安倍晋三からすれば、数々のスキャンダルとコロナ対策の失敗で下降する内閣支持率を、「河野ショック」で持ち上げる効果を狙ったのだろう。

 

 

だが「イージス断念」は「敵基地攻撃能力保有」論と一体という事を忘れないように。                     (編集部N